東洋医学では不眠を「不ビ」という。
「不ビ」=睡眠障害の総称であり、具体的には以下3つの症状を指す。
①寝つきが悪い
②眠っても覚め易い
③一晩中眠れない ことを指す
いわゆる「入眠困難」・「中途覚醒」・「完徹」を指していることがわかる。
原因は「心神が養われず、精神活動が安定しないこと」である。
鑑別ポイントはどうして心身が養われないのか?という視点であろうか。
・寒すぎたり暑すぎたりという「気候」
・睡眠前に茶・コーヒーなどの興奮性飲料を口にする「飲食」
・精神を刺激する出来事にあうこと「ショック」
・消耗するくらい悩むこと
などが挙げられている。
●東洋医学的な不眠8パターン●
①心陰虚タイプ
慢性病患者や身体が虚弱な人が腎陰を損傷する。この「腎陰」は「心火」(精神活動)が活発になりすぎないように互いに影響を及ぼしあっている。つまり腎陰の不足は精神活動を盛んにさせてしまい入眠しにくくなるのである
(身体症状)
心煩不眠・頭暈耳鳴・ものわすれ・入眠困難・多く夢を見る・一定時刻に発熱する・寝汗・手足胸部のほてり・などなど
(治法)
滋心陰・養心神
②心腎不交
働きすぎなどで「腎陰」が不足する。腎の陰分は心の陽気の亢進をおさめる役割を担う。
しかし陰分の不足により心陽がひとりでに亢進する。
①よりも症状が重い。完徹となることも。
(身体症状)
重度の入眠困難でひどい場合は一睡もできない・頭痛・耳鳴り・一定時刻に発熱する・寝汗・手足胸部のほてり・などなど
(配穴)
滋腎水・降心火・交通心腎
③心火亢盛
ショックなどにより精神活動が活発になることにより生じる不眠。
①・②よりも熱所見が強い。
(身体症状)
動悸・顔が赤い・口が苦い・口内炎ができることも。
(治法)
清心安神
④心脾両虚(虚証タイプ)
血液の加減が不足して、血液不足により心を滋養できなくなることで生じる不眠
思慮過度で食事量の減少が起こり、心を養う源(血)が不足することが原因となる
(身体症状)
不夢が多くて目が覚め易い・動悸・物忘れ・食欲減退・顔色にツヤない・排便はゆるい・飲食の香りがしない(血虚症状が多い)
(治法)
健脾益気・養心安神
⑤多痰(痰熱)
体内に余剰水分が慢性的に停滞し、熱気を帯びた原因物質・痰飲。
これが心神に作用することで不眠が形成される。
痰熱形成の原因は以下の2点
1)飲食の不摂生(味の濃いもの甘いものなど)により消化器が損傷
2)熱性の強い気候が身体へ浸潤。体内へ侵入した熱は水液物質を煎じつめる
(身体症状)
横になっても落ち着かない・多く夢をみて目が覚め易い・嘔悪胸悶・舌に苔がベッタリ・口の中がネバネバする
(治法)
清熱化痰安神
⑥肝火(肝経鬱熱・肝胆鬱熱)
ストレスや激怒で肝を損傷し、精神活動の停滞(鬱鬱とした気分)が生じる。慢性化によって熱化する。
(身体症状)
滞り症状(ストレス)・熱症状がメイン。寝床についても落ち着かない・夢を多く見る・寝ても目が覚ましやすい・不眠・イライラ・よく起こる・口が乾いて水をのむ・目が赤い・溜息が多い
(治法)
清熱瀉火安神
⑦胆虚
体質が虚弱でもともと心・胆が弱く、突然のショックに抵抗する力がない。
ショックをもろにうけることで心が養われず、不眠が出現。
(身体症状)
怖くて寝ることができない・多く夢を見る・入眠後よく目を覚ます・動悸・びくびくする・わけもなく恐怖心を抱く
(治法)
温胆益気寧神
⑧余熱襲隔(熱タイプ)
発熱などによく生じ、体内から抜けきらない熱が心を乱すことによりことで生じる
(身体症状)
重度の入眠困難・横になっても落ち着かない・胸隔部は苦しい
(治法)
清熱除煩
8つのタイプを紹介しましたが、なかなかイメージがつきにくいかと思います。
ただ我々鍼灸師は不眠の原因を考察する際に、いろいろな情報を集めて原因を追究し、治療にあたって参ります。「不眠」という言葉一つにも考えられる原因は多数存在するのです。
(この8タイプも典型的な一例となります)。
少しでも我々の頭の中の様子が伝われば幸いです。
お悩みの方はぜひ当院へ一度ご相談くださいませ。
スタッフ 杉本