甲状腺異常

2020/7

甲状腺ホルモンの構造や働きは専門誌に譲るとして、ここでは鍼灸治療との関わりを考えてゆく。

甲状腺ホルモンに異常を持つ人は決して少なくない。男女比なら女性が多い。

その症状は多岐に渡るが、大きく分泌過多(亢進型)と分泌不足(低下型)に分ける。

亢進型では新陳代謝が旺盛になり過ぎるための弊害が出る。発汗過多、微熱、ほてり、動悸、頻脈、振顫、頻尿、高血圧、体重減少、無月経などが起こりやすい。病名でいうとバセドウ病、亜急性甲状腺炎などがある。

低下型では文字通り不足により機能低下が顕著になり、冷え、低体温、体重増加、浮腫、脱毛、徐脈、筋力低下、倦怠感、眠気、月経不順などをあらわす。橋本病や放射線治療の後・ヨード過剰摂取などで起こりやすい。

また橋本病やバセドウ病は自己免疫疾患であり、過度なストレスや緊張、出産などを契機に発症しやすい。最近の研究では両者は移行することもあるという。

 

《鍼灸ではどう考える》

症状からその傾向性を中学的に分析すると、亢進型では実熱〜傷陰して陰虚内熱あるいは陰虚火旺に移行しやすい。治療は滋陰清熱が主体で、更年期治療に類似する。

低下型は症状から察し、陽虚〜気血両虚に流れやすい。補気補血を主とするか補陽に力点を置くかを見極め治療に入る。

※この数年で見た10数例の患者さんから興味深い事実に突き当たったので報告する。

橋本病、バセドウ病などの診断の下った患者さんは、確かに上記の様な症状をあらわすのに対して、甲状腺の数値が正常内の上限や下限で、他の数値との兼ね合いで確定診断に至らないケースでは、その症状が必ずしも亢進的・低下的とならず、むしろ混合的な症状を呈するケースも少なくはない。

これには自律神経のアンバランス→軽度の甲状腺異常なら、その症状の原因は自律神経の乱れにあり、混合的症状を呈しやすい。進行した甲状腺異常ははっきりと亢進型・低下型に別れ、それに応じた症状をあらわす。

直近の例では、精神的ショックから脱毛及びT3・T4の低下があり、さも橋本病あたりを疑える(ドクター見解も同様)方が、その後は、不眠、動悸、眼異常、羸痩と、むしろ機能亢進を思わせるものに変化する。つまり自律神経のアンバランスが主体であり、結果として甲状腺異常があらわれた例ではなかろうか? 

 

《病気とは》

病気は進行してゆくにつれ、ある方向性に固まってくる。甲状腺異常なら進行とともに亢進型なり低下型なりにはっきりと分かれてくる。ただ、その過程においては方向性の定まらないことが多々ある。先の例なら自律神経のアンバランスが前面に出て両症状があらわれることもある。鍼灸院では、健康とはいえないが病気が確定するに至らない、ある意味不安定な状態にある方が多数来院する。そのことをお伝えしながら治療的サポートできれば、現代医学の盲点を埋めることができように思う。  

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  ※新着時期を過ぎると左サイドバー《甲状腺》に収められています。

中医学で考える甲状腺機能亢進症

甲状腺機能亢進症は簡称として「甲亢」という。

女性に多く見られ男性の患者に対して4〜6:1の比率である。

どの年齢にもみられる疾患であるが青壮年期に見られることが多い。

動悸・情緒の波・食欲亢進・体重の軽減・甲状腺の張れ・口の渇き・折っぽくなる・眼球突出などの症状が出現することが多い。

発症の原因は、精神的なストレス・地域性・飲食・感染・妊娠など多岐にわたる。

 

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中医書では原因から3タイプに分類されている。

出現する症状と使用するツボは以下の通り。

証型
症状 取穴
肝鬱痰凝 甲状腺肥大・イライラや不安感などの精神症状・目が渇き眼球突出 太衝・陽陵泉・内関・天柱など
肝血虚損 動悸・不安感・手足や胸のほてり・口が乾く・不眠・もの忘れ 血海・肝兪・太衝など
肝胃火熱 食欲の亢進・身体がほてり喉が渇く 行間・内庭・天柱・内関など

 

お悩みの方はぜひ当院までご相談ください。

 

スタッフ 杉本

中医学で考える甲状腺機能低下症

甲状腺の機能減退を東洋医学では「甲減」という。

本病の多くは中高年期での発病が最も多く、1:4〜6の比率で女性に多い。

先天的なものは「遺伝」に由来するものであり、後天的なものは「栄養不足」によるものが主とされる。

 

先天不足によるものは多くが「腎陽不足」とされる。

・幼少期から小児発達遅延症状が見受けれらる

(歩き始めるのが遅い・言葉を話すのが遅い・歯が生えるのが遅い・声をかけても反応が鈍い)

・陽気(からだをあたためる力)が不足しているため、体温が低く顔は青白い。

●使用するツボ→関元・気海・腎兪・膏肓など

 

後天不足によるものは「脾陽虚」からの「脾腎両虚」により気血の不足が全身へと波及するとされる。

・エネルギー不足症状が主である(食欲ない・寒がり・手足が冷える・無表情・便秘・常に眠い・話し声がぼそぼそしている)

●使用するツボ→命門・関元・気海・陰陵泉など

 

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よくご相談いただく疾患です。お悩みの方は当院まで一度ご相談ください。

 

スタッフ 杉本

 

◎参考文献

「430種疾病鍼灸表解」 中医古籍出版社