胃に関わる「つわり」の東洋医学的分類

先日、つわりについての解説を行った。

「生理時」には子宮から排出される気が「妊娠」によって排出することが出来なくなる。ゆえに出口を見失った気は運行ルートを逆上し、胃に到達した場合に食べづわりが起こる。つまり妊娠初期においては、「臓腑」⇒「経絡(気血の運行ルート)」⇒「子宮のルート」が、「子宮」⇒「経絡」⇒「臓腑」となるのである。

 

ふと思ったがもともとの体質によって、出現する症状は変わってくるのであろうか?

胃は「下向き」のはたらくのが正常であり、妊娠時は気が「上逆」するとされている。

つまり「胃」⇒気⇐「子宮」というバッティングした状態である。もともと消化器が弱い体質であれば、気を下降させる力が弱いため、子宮からの気が上逆しやすいのではなかろうか?

その他、胃の状態によって悪心嘔吐の状況・程度・吐き出される内容物も違うのではないかと気になり始めたので中医書を引いてみる。中医書には「妊娠嘔吐」という記載があり、「胃」の機能低下から派生するものは4つ記載されていたので、以下東洋医学的な胃のはたらきを含めて「妊娠嘔吐」について解説を行っていきたい。

 

●妊娠嘔吐について

つわり・悪阻については中医書では「妊娠嘔吐」と定義されている。「吐き気」・「嘔吐」・「臭いづわり」・「食べるとすぐ吐く」などが症状として挙げられる。一般的には妊娠初期に見られ軽度であれば8〜12週で自然に消失するが、重度であれば頻繁に嘔吐し、食べることができないといった症状が出現する。

 

●「胃」のはたらき・機能低下について

おもなはたらくとして、@飲食物の初歩的な消化(受納・腐熟)を行い、A小腸におくること(降濁)である。

口から入った飲食物を受け止め、その後受け取った飲食物をドロドロの粥状に溶かしている。消化を終えた飲食物はひとつ残らず小腸へ輸送される。

胃の機能低下としては、初期消化機能の低下・飲食物を輸送する働きが弱まる、といった症状が出現する。

 

●「妊娠嘔吐」の東洋医学的分類

胃の機能が失調するタイプの妊娠嘔吐としては「@気虚(機能低下)」「A冷え」「B熱」「C痰滞(水液過多)」が挙げられている。各タイプの解説・嘔吐の特徴については以下の通り。

 

@胃虚妊娠嘔吐(いきょにんしんおうと)

胃→小腸への輸送(降ろす)力が弱く、妊娠時の「気」の上逆する力に抵抗することが出来ず嘔吐が生じる。もともと消化器が弱い方に多い。特徴は食べたらすぐ吐いてしまう・そもそも食べることが出来ないことが挙げられる(初期消化のはたらき・飲食物を受け入れる力が弱いため)。 

 

A胃寒妊娠嘔吐(いかんにんしんおうと)

「冷え」は胃の初期消化・輸送するはたらきを低下させる他に、水液物質の吸収・全身に散布するはたらきを低下させてしまう。嘔吐の特徴としては、水液も一緒に嘔吐してしまうこと・冷えにより悪化してしまうことが挙げられる。胃が冷える原因としては、つめたいものの撮りすぎ・加齢によって体の温める機能の低下など。


B胃熱妊娠嘔吐(いねつにんしんおうと)

「熱」は胃の活動を活発にさせる他に、炎上性という特徴により上向きのちからが作用することが挙げられる。この「胃の上逆」に加えて「子宮からの上逆」が加わることで嘔吐が生じる。ゆえに嘔吐の勢いは他のものと比較しても激しいものであることが考えられる。胃に熱が生じる原因としては平素からの嗜好(辛い物の食べ過ぎ)などが挙げられる。


C痰滞妊娠嘔吐(たんたいにんしんおうと)

身体の水液代謝のはたらきが弱いために、胃に粘り気のある痰液が存在してしまった状態を指す。

嘔吐の際に粘り気のある痰・よだれを吐くことが特徴として挙げられる。よだれづわりのような症状はこの分類にあてはまるのではないかと考えられる。


スタッフ 杉本

 

◎参考文献

「中医症状鑑別診断学」 人民衛生出版社

「中医基本用語辞典」 東洋学術出版社

「漢方用語大辞典」 燎原出版社

 

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