妊娠された患者様から「つわりがつらいので動けない」というキャンセルの連絡が続く。
本日も10週目前の患者様からご連絡をいただいた。
つわりは早ければ妊娠4週頃から出現し、一般的には10週目ごろにピークを迎える。そして11週頃に落ち着くのが一般的である。出現する「つわり」は個人差があり、「たべづわり」・「吐きづわり」はじめ「臭いつわり」・「よだれづわり」・「眠りづわり」などが出現する。水分が取れない・嘔吐がひどい・5%以上の体重減少は「悪阻」とみなされ注意が必要であるが、「つわり」は赤ちゃんが健康に育っているサインと認識していただきたい。
●東洋医学的な「妊娠中の子宮の状態」について
子宮は主に「栄養物質(東洋医学用語では血)」・「エネルギー物質(東洋医学上の気)」が同等に存在されているとされる。妊娠初期においては赤ちゃんが組織をどんどん作りだすために絶え間なく変化を繰り返していく段階である。つまり、「栄養物質」よりも「エネルギー物質(気の気化作用という)」の方が必要とされる段階なのである。ゆえに子宮内において「血」<「気」の状態となる。
「気」・「血」はいずれも「内臓(五臓)」⇒「経絡(気血の運行ルート)」⇒「子宮」のルートで供給されている。
●東洋医学的な「つわり」の解説
妊娠時(特に初期)には子宮内のエネルギー物質(気)が余剰な状態となっている。体外で排出するのは月経中であれば可能であるが、妊娠中は流産となってしまうため難しい。ではどうなるか?
先の「五臓」⇒「経絡(気血の運行ルート)」⇒「子宮」のルートを逆行し、
「子宮」⇒「経絡(気血の運行ルート)」⇒「五臓」のルートを余剰な気は辿っていきます。
主な「五臓」は「脾(胃)」「肝」「腎」となるのですが、どこに作用するかによって出現するつわりが異なってきます。(ちなみに…「脾(胃)」は消化器・「肝」は栄養物質の貯蔵・「腎」は生殖に密接に関与されているとされています)
●余剰な気が胃に到達すると?
胃は本来食物を消化して腸へと下降させていくことがはたらきとされます。下向きのはたらきに対して上向きの余剰な気が加わることで、お腹の膨満感や胃もたれといった症状を出現します。さらに花ひどいケース(余剰な気が過度な場合)、上逆症状として悪心嘔吐が出現し、ひどいケースでは水を吐くといった症状となるのです。
●どうしても治療に来れない場合には?
つわりがつらくて治療にくることができない場合にはセルフケアでツボにお灸をしていただけるだけでも身体の状態が変わってきます。代表的なツボとしては「内関(ないかん)」が挙げられます。
「車酔いには内関を押すといい」と言われておりますが、中医書でも「和胃(胃の調子を整える」との記載も見受けられているのです。つらくて我慢できない方はぜひご自宅でお試しください。
※内関は「手首から指三本下」・「腱と腱の間」になります。
(「肝」・「腎」に余剰な気が到達したケースの紹介は別の機会に…)
スタッフ 杉本
◎参考文献
「実用中医婦科学」
「病気がみえる 婦人科」 メディックメディア
「病気がみえる 産科」 メディックメディア
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