経血の性状がサラサラとしており、希薄な状態を中医学では「経血清稀」という。
経質が直接の治療対象となることは少ないが、婦人科系の症状の鑑別・診断や全身の状態を把握する上で重要な情報となる。
●経血がサラサラするということ
あくまでイメージであるが、血液は「血球成分」と「液体成分」により構成されている。通常に比べて血球・液体のバランスが崩れることで経血の状態に異常をきたすと考えられる。血球成分が少なくなるか、液体成分が過剰となるか。いずれかのパターンにより経血の性状がサラサラしてしまう。以下の情報をもとに、中医書における「経血清稀」の5パターンを解説していきたい。
①血虚経血清稀
体内に保有している血液成分の不足に由来する。失血過多や多産などにより体外への血液の排出により、子宮へ供給する割合が少なくなることが原因となる。失血・貧血症状が見受けれられる。
(特徴)月経の遅れ・量は少ない・月経後お腹がシクシク痛む
(身体症状)顔が白い・眩暈・動悸・不眠など
②気虚経血清稀
消化器の低下により飲食物から十分に栄養(ここでは血液成分を構成するものを指す)を消化・吸収できないことに由来する。消化機能の低下は飲食の不摂生他・考えすぎや働き過ぎによる疲労などにより生じる。
(特徴)経色は淡い・月経が早まる・量は多い・不正出血が伴うなど
(身体症状)息切れ・ボソボソ声で話す・寒がり・精神抑鬱感など
③肝腎陰虚経血清稀
血液成分に関わる五臓の失調に由来する。五臓の「肝」は血液の貯蔵庫とされ、「腎」は血液の元となる成分を貯蔵しているとされている。「肝」「腎」が損傷することは身体における血液不足を生じさせる。その結果、子宮に満たされる血球成分は不足してしまい、経質はサラサラとしてしまう。「肝」「腎」の虚損は長患いや飲酒過多などが原因となる。
(特徴)経色は鮮紅色・月経の遅れ・量は少ない
(身体症状)両頬が赤らむ・手足と胸部の熱感・動悸・不眠・眩暈・耳鳴り・膝腰が重だるい
④寒湿経血清稀
余剰水分が子宮に流入されることが原因となる。主に冷え・湿気により消化器の働きが低下することに由来する。湿気の強い環境に長期間居住していたり、月経時に雨に濡れたままの状態でいることなどが原因とされる。
(特徴)経色は紫暗色(黒豆汁のようとされる)・血塊を伴う・月経時の下腹部の冷えや痛み
(身体症状)白色のおりものが多い・腰がだるく体が重だるい・下痢など
⑤脾腎陽虚経血清稀
余剰水分が子宮に流入されることにより生じる。体内の水液代謝は臓腑の「脾」「腎」が強調して行っている。これらは一定の温かさがあることで正常に水液代謝を行うが、冷えることで代謝異常が生じ余剰水分が生み出されてしまう。冷えの原因としては、もともとの冷え体質はじめ生ものや冷たいものの過食、身体を冷やす作用がある食材を多量に食べることなどが挙げられる。
(特徴)経色が淡い(水のようとされる)・月経期に唇や顔が青白くなるなど
(身体症状)手足の冷え・下腹部の冷え・白色のおりものがおおい・下痢・頻尿など
血液がネバネバする解説は、コチラから。
スタッフ杉本
◎参考文献
「中医症状鑑別診断学」 人民衛生出版社
「漢方用語大辞典」燎原
「問診のすすめ」 東洋学術出版社
「中医基本用語辞典」 東洋学術出版社
「中医病因病機学」東洋学術出版社