●嗅覚異常の東洋医学的解説
中医学では嗅覚障害のことを「失嗅(しつきゅう)」という。
古典の内容をざっくり説明すると「鼻のはたらきがよろしくないこと」ことにより生じる。
ざっくりしすぎてよくないので鼻の正常な状態を考えてみた。
・必要な空気が体内へ吸入されること
・不要な空気が体外へ排出されること
・鼻をはじめとした気道につまりがないこと
・適度に潤いが物質が存在すること(鼻水・鼻毛) などが考えられる。
「しっかりと空気の交換ができること(主に吸気)」・「つまりがないこと」・「匂いを感じる物質が十分にあること」が原因か。上記おおきく3つのタイプに分類するが、下記中医書の記載を参考に説明していきたい。
●失嗅の東洋医学的分類●
①肺経風熱による失臭(鼻づまりタイプ)
風邪の初期のイメージ。発熱初期は主に体内ではなく体表面に病気の原因が存在するが、気道の入り口である鼻の穴に熱がとどまることで生じる。熱が鼻の水液成分をとばすため黄色い鼻水や鼻詰まりが生じる。鼻が詰まるゆえに嗅覚のトラブルも出現する。
発症は急であり、発熱・咳などの風邪症状を伴うことが特徴。
②胆腑鬱熱による失臭(吸気・呼気低下タイプ)体表にいた熱が体内に侵入することにより生じる。巡ることなく鬱積して熱が身体上部へ昇り、鼻の穴に作用することで嗅覚の異常が生じる。鼻水・痰が多く空気を吸う・吐く力の異常が原因らしい。口の苦みを伴うことがポイントか。
③脾経湿熱による失臭(鼻づまり+吸気・呼気低下タイプ)飲食不摂生などにより消化器に余剰な水分が溜まる。水液が散布されることなく長期間に停滞することで消化吸収能が低下。エネルギー不足のため身体への上部へのエネルギー供給が低下。吸気・吐気の力が低下することにより鼻の穴の通りも悪くなるために嗅覚異常が生じる。余剰な水分が多いことから鼻づまりや鼻水が多くなることが特徴である。
④肺脾両虚による失臭(吸気・呼気低下タイプ)
気道の入り口である「鼻」は肺に通じている。その肺はエネルギーと水液物質を全身に散布しているが、その働きは五臓「脾」に依存している(エネルギー・水液物質は脾より生み出される)。
「肺」「脾」双方が虚損することで、エネルギー・水液物質を生成・供給する力が弱くなることで身体上部(鼻)では鼻づまり・嗅覚の減退が生じる。ひどい場合には嗅覚障害となり、左右差が生じることも。
⑤血オ阻肺による失臭(鼻づまりタイプ)血液が停滞することにより生じる「オ血」。これが鼻の穴に生じることで発症する。
「オ血」が鼻の穴をブロックすることで匂いの感受性が低下・ひどい場合には嗅覚障害が生じる。ウイルスなどが鼻を侵襲する・鼻をぶつけるなどの物理的な外傷がきっかけとなる。鼻のつまりを伴うことも多い。
⑥気血両虚による失臭(機能失調タイプ)エネルギー・栄養不足により鼻の穴を十分に養うことができなくなることにより、嗅覚の失調が生じる。鼻の通りはよく鼻水が少ないことが特徴。
先述の3タイプ(①・②・③)と比較して、後述の3タイプ(④・⑤・⑥)の方が治りにくいとされる。
鑑別はもちろんのこと、おおよその治療期間と適切な治療頻度を提案のもと治療をすすめていきます。新型コロナウイルス後遺症でよく見受けられた症状です。当院にも多くご相談いただいている疾患ですので、お困りの方はぜひご相談ください。
スタッフ 杉本