「味覚の異常」について以前記事を書いたと記憶している。
そこでの記載はなかったが、中医書を目を通していると「舌不知味」という記載がみられた。
舌で飲食物を味わえないことをさすようである。しかし「味覚障害」や「木舌(舌が腫脹して木のように固くなるもの)」とは別物であるとされる。
●舌不知味の東洋医学的分類●
舌についての古典上の記載を見てみる。「心は舌をつかさどる・・・。キョウにたっては舌となす」という記載があるよう「舌は五臓の心と密接にかかわっている」ことが理解できる。
中医書の記載でも「心」の不調によるものが多く見受けられる。
①心血虚タイプ
栄養不足により心が正常に働かないことが原因。心と関連のある舌も正常に働かないことで味を感じないようになる。出産などによる失血過多などが原因で血の不足が生じる。
鑑別ポイントとしては、舌の赤味が淡いことが挙げられる。
②痰迷心キョウタイプ
体内に停滞した余剰水分が心キョウに詰まることで生じる。余剰水分は多湿な環境や身体の水液代謝機能が低下することにより出現する。
鑑別ポイントとしては、発声の際に痰がからむ・舌の苔がベッタリついていることが挙げられる。
③食中毒タイプ
毒物が「心」に作用することで生じる。関連する舌も心と同様に正常な活動を行うことができなくなるために味を感じないといったエラー症状が出現する。誤って毒性を有するものを口にすることで生じる。
鑑別ポイントとしては、はっきりとして原因が存在し(●●を口にした等)悪心・嘔吐・腹痛などの症状を伴うことが挙げられる。
舌が正常なはたらきには「心」に十分な気・血(エネルギー・栄養)が必要であることを理解していただけたら幸いである。
スタッフ 杉本