妊娠24週の患者さんから「夜寝ていて足をつる」という相談を頂いた。
中医学において「筋(筋膜や筋腱に相当)」は五臓の「肝」が密接に関係しており「肝」の機能失調が筋膜・筋腱の症状として出現することが多い。患者さんのもともとの体質(血液の貯蔵レベルが低い「肝血虚」)に妊娠が加わり、母体の筋腱が養われなくなったことで生じたものと推測する。
治療後改めて、中医書を引いてみる。「妊娠下肢抽筋(にんしんかしちゅうきん)」という表記が見受けられ、「妊娠後期にふくらはぎ・足部がつり、夜間とりわけ睡眠中につることが多い」と記載されていた。この妊娠下肢抽筋は大きく2種類に分類され、上記事例については「血虚下肢抽筋①」に該当し実際に患者さんが述べた症状と中医書に記載されている症状がまるまるリンクする面白い症例であった。(残念ながら身体症状までは一致せず。中医書には動悸・眠れないもしくは目が覚めやすく夢見が多いなどの記載あり)
勉強ついでにもうひと解説加える。もう1つの記載は「寒凝下肢抽筋②」いわば冷えによるものである。冷えに血流が滞ってしまい、四肢に血液が供給されないゆえに生じる。前述の血虚タイプによるものと比較すると、寒凝タイプは夜間や睡眠時などの時間は問わないが、外気温などの「冷え」により生じ「温める」ことで軽減することが特徴として挙げられる。身体症状としても寒がり・手足の冷えなどの症状が見受けられる。
解説をしてしまうと、特別な症状のように見られるかもしれないが妊娠後期にはよく見られる症状とされている。よく見られる症状ではあるが、母親にとっては心配な身体の変化かもしれない。胎児の出産に向けてのお手伝いはもちろん、妊娠中各段階に応じて出現する母体のケアもしっかり行っていきたい。
スタッフ 杉本
◎参考文献
「中医症状鑑別診断学」 人民衛生出版社
「中医病因病機学」 東洋学術出版社
「中医基本用語辞典」 東洋学術出版社
「漢方用語大辞典」 燎原出版社
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