月経周期が一定ではなく、早くなったり遅くなったり不安定となるものを「経乱」・「経行前後不定期」と指す。ただし、閉経期前後の周期の不安定な状態は除かれる。
以下、代表的な2パターンについての解説をする。
「月経周期の早まり(経早)」・「月経周期の延長(経遅)」が混在していることが確認できる。
①肝鬱腎虚経行前後不定期
「肝」は全身の気の動きを調整する。働きが悪くなることで子宮内への血液運行が停滞し充満するのに時間を要する。そのため「肝」の失調は、月経周期の延長(経遅)が生じる。
対して「腎」の封蔵作用は血液を子宮内に溜めておく作用を有する。そのため、「腎」の失調は子宮内にある血液を留めることができないため月経周期の短縮(経早)が生じる。
月経の短縮・延長が双方の失調により生じ、月経周期の乱れとして現れる。
(原因)
肝…長期間ストレスにさらされる、精神的な抑鬱が続く、突発的な精神的ショックを受けるなどの精神的な面なものに大きく左右される
腎…もともとの虚弱体質であること、長期間病を患うこと・出産時の失血過多など
(特徴)
経量がバラバラである
(身体症状)
イライラ感・精神抑鬱・胸脇部の張り感・よくため息がつく・お腹がガスっぽい・膝腰の重だるさ・めまい・耳鳴り・性欲減退など
②脾虚(心脾両虚)経行前後不定期
大きく「脾」に関与しており、①運化(うんか)の失調と②統血(とうけつ)作用の失調による。
「運化」の失調により、飲食物から栄養・エネルギーを生みだすことが出来ず全身の気血不足が生じる。子宮へ運搬される血液量も不足し、血液が充満されるために時間を要することから月経周期の延長(経遅)が生じる。
「統血」の失調により、子宮内に留めてある血液が漏れ出てしまうため、月経周期の早まり(経早)が生じる。統血作用は血液を脈管から漏れ出ないようにする作用があるとされる)。
月経周期の早まり・延長双方が生じ、月経周期の不規則が生まれる。
なお長期的な脾の失調により「心」にも波及するケースが見られる。
(原因)
飲食の不摂生・働き過ぎる・思い悩みすぎ
(特徴)
経色は淡紅色・量は少ない
(身体症状)
顔色は黄色い・倦怠感・息切れ・声に力ない・不眠・眩暈・動悸など
スタッフ 杉本
◎参考文献
「中医症状鑑別診断学」 人民衛生出版社
「中医症候鑑別診断学」 人民衛生出版社
「問診のすすめ」 東洋学術出版社
「中医基本用語辞典」 東洋学術出版社
「漢方用語大辞典」 燎原出版社
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