習慣性流産を東洋医学では「滑胎」・「数堕胎」という。
連続して3回以上自然に流産するものをいい、不育症の大半を占める。
多くは腎虚・気虚・血熱・外傷などの原因によって起こる。
①腎気不固滑胎
気の作用として「物質を一定位置に留めておく」ものがある(固摂作用)。
妊娠中においては、子宮内に胎児を留める役割を有する。
五臓の「腎」の不調により、胎児を子宮内に留めておく力が弱くなってしまうため滑胎が生じる。
歳を重ねることや過剰な性生活が原因となることが多い。
身体的な症状としては、妊娠後膝腰が重だるくなる・眩暈耳鳴り・排尿回数が増えるなどが出現する。
②脾胃気虚滑胎
胎児に十分なエネルギーや栄養物質が供給されないことが主な原因となる。
消化器の失調によることが多い。飲食物を消化・吸収する力が低下し胎児が育つのに必要な量を取り込めない結果、滑胎が生じる。
飲食の不摂生他、働き過ぎや考えすぎも原因となる。
身体症状として、顔は黄色くわずかにむくむ・精神疲労・声は小さくボソボソと話す・食欲はあるが食べられない・下痢傾向などが現れる。
③相火妄動滑胎
子宮内に熱が生じ、エネルギー・栄養分・水分などを損傷させることが主な原因となる。
熱を生みだす原因としては、人の情欲が亢進して欲望が思うように満たされないことや過剰な性生活が挙げられる。
身体症状として、両方の頬は赤い・口が乾き飲み物を飲みたがる・膝腰の痛み・陰部より出血などが出現する。
④虚寒相博滑胎
子宮の冷えにより胎児が生命活動を行う上で必要な栄養・体温が奪われることが原因となる。
冷え体質であること。その他、寒冷な環境が母親の体内に侵襲し、子宮に達することで生じる。また虚弱な体質であるほど、外的気候の影響(ここでは寒冷刺激)を受けやすいとされている。
身体症状としては、下腹部が冷え痛む・手足の冷え・膝腰が重だるい・下痢・尿の色は淡く量は多いなどが現れる。
⑤外傷滑胎
外傷による滑胎。躓きこけるなど妊娠後明らかな外傷歴がある。
①〜④と比較し明確な原因があるために鑑別しやすい。陰部からの出血が見られる。
スタッフ 杉本
◎参考文献
「中医症状鑑別診断学」 人民衛生出版社
「中医基本用語辞典」 東洋学術出版社
「漢方用語大辞典」 燎原出版社
「病気がみえる 産科 第2版」 メディックメディア
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