前回血便についての解説を行いました。
引き続き、排せつ関係について調べてみると、「大便膿血」という表記がみられます。
ネバネバした液体や血液をともなう下痢があり、排便回数が頻繁であること、裏急後重(急激な腹痛がおこり、常に便意があるが、排便によって便意が解消されず肛門の下垂感を伴う疾病))を伴うものを指す。ゼリー状であり血液を含む疾患としては、「痔」、「感染性腸炎」、「潰瘍性大腸炎」、「大腸がん」などが考えます。
東洋医学的に考えると、身体がどのようなことが生じているのか?
「大便膿血=膿血便」についての解説を行っていきたいと思います。
①大腸湿熱による膿血便原因としては、飲食不摂生や高温多湿な環境などにより胃腸に湿熱が生じ、大腸へと下降することにより生じる。
「湿」が多いものはネバネバした液体の割合が多く血液は少ない。
「熱」は反対に、ネバネバした液体の割合が少ないが血液は多い。
もちろん「湿」「熱」双方に盛んな場合には、粘液と膿血(赤白の夾雑物)を下痢する。
(特徴)排便回数は頻繁・腹痛、肛門の灼熱感を伴う・最初は水様便が出て膿血便が出る・量は少ない
(身体症状)小便は赤色・量は少ない・嘔吐・身体が熱い、など
②寒湿阻滞による膿血便普段より寒冷の食事を摂取しすぎて胃腸を冷やしてしまい、消化吸収能力が低下することが原因となる。生じた余剰水分が腸内にとどまり、腸の動きが停滞することで膿血便が生じる。
(特徴)。膿が多く血液が少ない下痢(豆乳のようと例えられる)・長く続く腹痛・暖めることや按ずることで軽減する
(身体症状)飲食を欲さない・小便は薄くて量が少ない、胸腹部のつかえ、など
伝染病由来。胃腸を侵襲し全身に高熱症状を発症させる。
(特徴)発病は急速で高温・激しい腹痛が生じる・紫色の膿血便または水様便となる・便は悪臭
(身体症状)唇は青紫色・顔色は青白い・舌色は深い赤色など
④下焦虚寒による膿血便慢性の下痢が続き、身体のエネルギー・栄養・潤い物質が損傷することが原因となる。
エネルギーが不足することで「脾(消化器)」「腎(排泄器・生殖器)」に冷えが生じる。
冷えは消化・吸収や食塊の運搬作用に影響を及ぼし、大腸の吸収や排せつ機能の低下が生じるため膿血が生じる。
(特徴)水様便・白色ゼリー状や薄い血液が混じる・我慢できる程度の腹痛・温める按ずることで楽になる
(身体症状)四肢の冷え・痩せる・食欲不振など
⑤陰虚内熱による膿血便慢性の下痢症状によって身体に必要な保湿物質が失われることが原因となる。
体を冷ます成分が少ないために相対的な熱が生じ、大腸に停滞することで膿血便が生じる。
慢性的な下痢がきっかけになることは、「④」と共通するが、身体症状で顕著な違いが現れる。
(特徴)耐えられる程度の腹痛が長時間続く
(身体症状)午後に体温が上昇する(甚だしければ夜間発熱)・便秘・尿が濃いなど
⑥時発時止膿血便初期治療時に下痢を止めることが早すぎることで治療がうまくいかなかったことが原因となる。
下痢を止めることが早すぎると腸内に熱を残してしまい、膿血便が生じる。
(特徴)発作時には血液が多く粘液は少ない下痢を排泄する・悪臭を放つ・非発作時はお腹の張りやはっきりしない痛みが続く・便秘と下痢が交互に続く
(身体症状)顔色は黄色い・心身疲労・食欲不振・痩せなど
スタッフ杉本