2020/6
不妊外来へ通われている患者さんには他の疾患にない大きな特徴があることに気づく。
もちろん東洋医学の視点からであるが、それは「大なり小なりの肝気鬱がある」ということ。
この不妊外来肝気鬱と呼ぶべき病理は、この治療のゴールというか着地点が見えないことに起因することが多い。
ゴールが3か月後か或いはもっと先の5年後か実のところ誰にもわからない。
たとえば骨折なら1か月後に骨がつくと予想できるが不妊治療ではこの予想が極めて立てにくい。
これは大きな不安を呼ぶ込む下地となる。
精神不安は血を消耗する。
血が消耗すると、ますます不安や恐れが強くなる(東洋医学では血は精神・感情のの栄養と考えているため)。
もう一つはこの治療は結論としては妊娠したか、しなかったかのどちらかしかない。
本来ならそうではないが・・・
事実、今回は妊娠しなかったけど内膜が10ミリ超えたから妊娠の可能性がより高くなったという思考する方は少ない(妥協する方はおられるが、それをもってステップアップと捉える方は少ない)。
そのため一回一回の判定日の緊張度は半端ない。
これが他の治療にないストレスとなり、肝の疏泄が失調し肝気鬱なる。
ほかにも周りからの重圧、金銭的不安、仕事との兼ね合いなどがこれに拍車をかける。
この治療で受ける反復ストレスがほかのストレスをも受けやすい気質に変化する感じといえばわかりやすいだろうか。
先が見えない不安と毎回毎回の緊張により恒常的な肝気鬱が作られる。
これが全身の気の巡りに影響し、とくに下垂体系のホルモン(FSH,LHなど)の異常に繋がることも良くある。
また肝気鬱とは肝気が停滞して十分な気を流すことができない状態という意味であるから、この気が最も必要な排卵、受精、着床の過程でのトラブルも引き起こす。
不妊の鍼灸治療では年齢的問題からくる腎精の盛衰、筋腫や内膜症或いは癒着などで起こりやすい血オがの有無などが重要視されるが、肝の疏泄を十分に確保すること(肝気鬱を改善すること)も大事な治療になる。
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