「悪心」とは心持ちが悪く吐き気を催す感じ・むかつきを指すらしい。
吐き気を感じるのに吐けない状態でもあり、「泛悪(はんお)」とも言われる。
●悪心が生じる原因について
悪心は、「胃」の機能の低下が大きな原因として考えられる。「胃」の機能は「①口から入った飲食物を受け止めること(受納)」・「②飲食物を消化すること(腐熟)」・「③小腸へ移送すること(降濁)」を担っている。
気候・飲食など何かしらの原因が「胃」に悪影響を及ぼすか、また他の五臓六腑が「胃」に作用することで悪心が生じるとされる。
以下、中医書に記載されている5パターンを解説していきたい。
●「悪心」についての東洋医学的分類
主に「胃に冷え・熱が生じたもの(①・②・③」・「ストレス④」・「食べ過ぎ⑤」によるものが挙げられる。
冷えにより胃のはたらきが悪くなったことが原因となる。寒冷な環境に身を置くことなどの「気候」・冷たいもの、生ものの食べ過ぎなど「生活習慣」が冷えを生じさせる原因となる。胃の食物を受け入れる能力・初期消化能力が低下することにより、悪心が生じる。あたたかいものを摂取したり、おへそ上を温めることで症状が楽になることが多い。
②胃熱による悪心(いねつ・熱タイプ)熱により胃のはたらきが悪くなること(ここでは過活動状態も含まれる)が原因となる。高温な環境などの「気候」・辛い者や味の濃い者の食べ過ぎなどの「生活習慣」が熱を生じさせる原因となる。灼熱感を伴う胃の痛みを伴うこともあり、熱の上に昇るという特性上、口臭が強くなるという特徴もある。
③胃陰虚による悪心(いいんきょ・渇きタイプ)栄養状態の低下や潤い不足により胃が滋養されないことが原因となる。発熱による身体の水分を損傷したこと・慢性的な胃の疾病を患うことが濡養不足の原因となる。胃のはたらきが低下していることから食欲不振や食べてもすぐに吐いてしまうといった症状がみられる。渇きが強いため、口の中が渇き・水分を欲することが特徴である。
④肝胃不和による悪心(ストレスタイプ)五臓「肝」の失調が「胃」に影響を及ぼすことが原因なる。「肝」は全身のはたらきをコントロールする役割を有している。ストレスや精神抑鬱状況が長期間続くなど精神面が「肝」機能の低下をもたらし、「胃」のはたらきまで波及することで悪心が出現する。お腹の張り感・食欲がなくなるといった症状を伴うことが多く、ストレスから解放されると悪心がおさまってくるといった特徴がある。
⑤傷食による悪心(暴飲暴食タイプ)暴飲暴食が原因。胃が疲れてしまうことで悪心が生じる。何も食べたくないし、匂いも嗅ぐのも嫌になるのが特徴か。本人自身も原因に心当たりがあることが多い。
5つのパターンを紹介しましたが、いかがだったでしょうか?
「胃」のはたらきが悪くなることが原因ですが、どのような原因が胃のはたらきを悪くしているのかで出現する症状が異なってくることが分かってくるかと思います。
私たちは皆様のお話を通じて、かつ脈やお腹・舌の状況を確認させていただいて原因を特定し治療を進めております。
症状の軽減ないし、再発防止のためのお手伝いも行いますのでお困りの方はぜひ。
スタッフ 杉本
◎参考文献◎
『広辞苑』 岩波新書
『中医症状鑑別診断学』 人民衛生出版社
※新着時期を過ぎると左サイドバー《胃腸の不調》に収められています。