2020/7
僕は日頃はごちゃごちゃと気を病む質だが、臨床に入った時だけは恐ろしく切り替えが早い。
ベッドから次のベッドに入った瞬間に前の方の症状、分析した内容、ときには名前まで忘れてしまう。
忘れるというか、頭の隅の格納庫に入れてしまうので、引きずってしまうことは皆無である。
その格納庫にしまう儀式が患者さんと患者さんの間に一度だけ大きな心呼吸をすることである。
長年の臨床経験からそれが一番良い治療ができると思い身に着けたようである。
「120%の力を軽く80%ぐらいで力でやっているようにする」というのが理想である。
ときどきテコでも病態が快方に向かわず、一進一退を繰り返す方もいる。
思い切った策を講じなければならないときである。
まず、治療の方向性を再検討する。
証は間違っていないのか?
あるいは証にたどり着くまでの病理は間違っていないのか?
確証を取り間違っていないなら・・・・
同じ方向でもツボを変えたり、刺激の質量を変えたりする。
それでもダメなら証として捉えた病理の前病理を治療の対象にしたりする。
他にもいろいろあるが、言いたいことは臨床家は二の手、三の手を常に用意しなければならない、ということなのである。
この折、前の患者さんのことを頭に残しているとフラットな状態で最善の策が打てないのである。
※新着時期を過ぎると左サイドバー《臨床のお話し》に収められています。