陰部神経痛はこの数年注目した疾患である。
ブログにも書いたが診断までに非常に時間がかかり、よく心因性疾患と間違えられる。
今年9例の症例を診たが5例に有効を示し、1例は無効であった。
弁証すると、著効を示した5例のうち、虚症系の4例は非常に有効であった。
3〜12回でその痛みが9割方は減少する。
実症系の1例も完治した例ではあるが、これは梨状筋症候群からきたケースである。陰部神経叢への刺針のみで緩和する。
残り4例のうち、2例が大腸癌に由来するものである。うち1例は癌進行期にあり、わずかに改善するものの、途中オペが入り中断になる。もう1例は大腸癌のオペ後のケースである。
介護によると思われる仙骨部からの神経圧迫の例も1例ある。少しは改善されるが、日常の所作と大いに関連するため、介護により再度悪化する。
もう1例は家族間の問題から高齢になり重労働を始めたケースである。このケースに関しては心因性は否定できない。現に抗うつ剤で緩和する。
(総括)
まだまだ陰部神経痛に関しては医学界全体で十分な研究がなされているとは言い難い現状で、症例は少ないものの、半数以上で効果的だったという事実は鍼灸が有効性を示す治療法であると解釈する。
中医学的視点では肺気虚の人が多い。肺気虚から宗気の下陥を起こし、骨盤内鬱滞現象を起こし、しいては骨盤内の血オに転じるという構造があることは確かである。