実はこの人、ある有名な人の実弟である。
兄は浄瑠璃・曽根崎心中で有名な近松門左衛門である。
学統は曲直瀬道三の率いた後世派に連なる。古医書の注釈を試み、江戸時代最大の注釈者として名を残す。
代表的な著書は「和語本草綱目」「方意弁義」「医方大成論諺解」「切要指南」などがある。湯液と鍼灸の二道に精通した学術兼備の名医であり、また「北条時頼伝」を著した史学者でもある。
あるとき、兄(近松)に「無学者でもわかるような諺解を著しているが、原典を読まない医者が増え、人命を誤らせることにつながる」と忠告され、それ以降諺解書を作ることをやめた、という。簡単にいえば、註解「おまえさ、いいことしている思ってんだろうが、註解ばっかやると、ちゃんと原典も読まない奴が増え、レベルの低い医者が増えるだよ」と兄に言われ、考え直したということだろう。
何の学問を目指すにしても。「自分で考える」。これに凌ぐ宝はないということである。
懇切丁寧に教えると、人は育たない。そんな気がしている。