逆子の至陰の灸

妊娠中期以後の逆子に、足の小指の爪際(至陰)が効果的なのは結構知られている話です。
太平聖恵方(10世紀末)に張文仲の説として、横産で右至陰灸三壮(小麦大様)とあります。
その流れは、鍼灸資生経(1220年)、類経図翼・婦人病(1624年)、鍼灸大成・婦人門(1601年)と続きます。 
また神応経・婦人部(1425年)に難産に合谷、三陰交、太衝とあり、血オを思わせる条文があります。これも歴代文献に散見します。
この至陰単独か、合谷+三陰交+太衝かが2大系統です。
我が国でも啓迪集・婦人門(曲直瀬道三、1574年)に至陰、大衝とある。
療治之大概集・婦人門(杉山和一、1682年)に三陰交・合谷・至陰とあります。
岡本一包も鍼灸聚英の説として至陰を紹介しています。
和漢三才図絵・懐妊胎孕(1712年)、鍼灸重宝記・妊娠(1718年)も右の至陰です。
(胎児に針を刺す) 
面白いところでは鍼灸則(1767年)には、横産で手から出てきた胎児の手のひらに軽く刺す、とありました。
(昔の妊娠中期の逆子の文献がない) 
逆子が出産時においてのみ記載されるのは、妊娠中期から胎児の頭が下を向くのが正常である、という認識がなかったためです。
1750年前後にアメリカの産科医ウイリアムスと、日本の産科医賀川玄悦により、この事実がほぼ同時に発見されました。それゆえ、それ以前の文献には妊娠中の逆子という認識はありません。
このように1000年近い歴史に洗われた至陰の灸です。試す価値はあると思います。