先日の続き。
胎動不安が生じる原因として、子宮に通じるルートにトラブルが生じることを説明いたしました。
主に①気(エネルギー)・②血(栄養)が不足して胎児を養うことが出来ない(詳細はこちら)。
今回はその他の4パターンの解説になります。
③腎虚胎動不安(じんきょたいどうふあん)
五臓の「腎」に起因するもの。「腎」は胎児へ必要なエネルギー源を保有する他、胎児を子宮内に留めておく作用を有する。ゆえに腎が損傷することで胎動不安が生じる。腰のだるさと腫脹・少量の膣内出血などの主症状の他に眩暈・耳鳴り・頻尿などの症状を見る。
④血熱胎動不安(けつねつたいどうふあん)
熱が原因となる。熱が子宮に及べば胎児の生育に必要な成分(エネルギー・栄養物質・水液物質)を焼却させてしまう。ゆえに胎児を養うことが出来ず胎動不安が生じる。体を温める力が盛んな体質・発熱などが原因となる。下腹部が張り、痛み伴うことが特徴。口や咽の渇きなどの身体症状が見られる。
⑤気鬱胎動不安(きうつたいどうふあん)
五臓の「肝」に起因するもの。「肝」は全身のエネルギー循環を調整する作用を有している。「肝」の損傷はエネルギー循環の停滞を生じさせる。子宮においては、エネルギー・栄養物質を子宮に届ける力に停滞が生じてしまう。ゆえに胎児を養うことが出来ずに胎動不安が生じる。腹部に張り感を伴うことが特徴。抑鬱感・怒りっぽいなどの精神症状を伴うことも多い。
⑥外傷胎動不安 (がいしょうたいどうふあん)
外傷に起因するもの。妊娠後になんらかの外的なショック(転倒・重たいものを持つなど)を受けて衝脈任脈の気血が損傷することによって発症する。腰が重だるく腹部が痛む・陰部からの出血がある者が多い。
いかがだったでしょうか?
今回は五臓の「肝」「腎」の失調に由来するもの・「熱」「外傷」に由来するものについて説明させていただきました。
皆様の症状を把握する上での参考になれば幸いです。
スタッフ 杉本
◎参考文献
「中医症状鑑別診断学」 人民衛生出版社
「わかる中医学入門」 燎原出版社
「中医病因病機学」 東洋学術出版社
「中医基本用語辞典」 東洋学術出版社
「漢方用語大辞典」 燎原出版社
※新着時期を過ぎると左サイドバー《妊娠中/産後の諸症状》に収められています。