先日、患者さんから40年ぶりに蕁麻疹(じんましん)を発症したとの話であった。
夜中に発症し、深夜にあいてたドラックストアに駆けつけて薬を飲んだことで以降は落ち着いているらしい。
『430種鍼灸表解』によると、『蕁麻疹』は中医学でいうところの、「隠疹」に該当するらしい。
●隠疹とは?
皮膚に発生する鮮紅色・蒼白色の面状や帯状の扁平隆起である。
「隠」という文字どおり、現れたり消えたりすることがこの名に由来する。
●蕁麻疹が出現する原因
ポイントは「熱」と「栄養」か。
『430種鍼灸表解』の記載によると大きく分けて、「皮膚が位置するところに熱が存在すること」・「皮膚の栄養状態が悪いこと」が原因として記載されている。
熱・栄養不足が生じる原因の一例は以下の通り
・辛いものや味の濃いものの食べ過ぎにより体内に生じた熱が身体表面(皮膚)へ押し上げられたこと。
・免疫力が低下に外的な気候の影響を受けやすくなる。熱性を帯びた気候を感受することで体内に熱が加わる
・食事の栄養状態が悪く、皮膚の栄養状態が低下すること
・胃腸の炎症が症状が全身に波及すること などなど
●蕁麻疹の東洋医学的分類
上述の内容を踏まえて「中医症状鑑別診断学」を用いて「隠疹」の細目の確認をしていきたい。
本書では、6つのタイプに分類されている。
①風熱タイプ(熱気候タイプ)
熱性の強い気候を感受することにより生じる。身体の免疫力が低下していると尚更生じやすい。皮膚表面において栄養物質の損傷や炎症症状を生じさせることにより生じる。
熱の性質が強いため色の赤味は強く、痒みは激しい。温めると悪化し、夏に発症しやすい。急激に全身に広がるケースもみられる。
②風寒タイプ(冷え気候タイプ)
冷えの性質が強い気候を感受することにより生じる。寒さで冷えることにより皮膚表面が引き締まることで栄養物質が皮膚へと供給されないことが原因となる。
冷えの性質が強いため赤味は弱くかゆみは伴わないことも。冷えたり風にあたると悪化することが特徴である。外気にさらされている素肌に出現することが多い。
③血熱タイプ(炎上タイプ)
血液が存在するところに熱が生じることが原因となる。炎症症状のイメージ。
熱が生じる原因としては、カッとするなどの怒りの感情が沸く・体に熱を生じさせる食物を口にすることが挙げられる。突如発症し、赤味やかゆみの程度は甚だしい。ひりひりとした皮膚の熱感も伴う。
④血オタイプ(滞りタイプ)
血液運行が滞ることで、体内から体表面(皮膚)に栄養物質を供給することができなくなることにより生じる。特に月経前の女性・皮膚を圧迫している部位に生じることが多い。
停滞するがゆえに暗紅色である。激しい掻痒感を伴い、かくと患部が拡大する。夜間や精神抑うつ状況が続く際に悪化することもある。
⑤胃腸積熱タイプ(消化器炎症タイプ)
飲食の不摂生や食した魚介類が体に合わないことで、消化器に熱が生じる。消化器に存在する熱が皮膚に部分まで燻蒸し、体外へ発散されることなく皮膚・皮下に停滞することで蕁麻疹が出現する。
皮膚はかゆいが赤味の程度は比較的落ち着いている。胃腸機能の低下が原因であるため腹部の不快感や便秘を伴うことが多い。
⑥気血両虚タイプ(栄養不足タイプ)
エネルギー・栄養不足ゆえに皮膚に潤いがなくなることで生じる。色味はさほど赤くないが激しいかゆみが出現する。隆起物は突然現れてはすぐ消える状態を繰り返し中々治癒しないことが多い。ストレス・や飲食の不摂生により消化器の消化・吸収能力が低下し。長患いも原因となる。
担当患者様は「甲殻類」を口にされたようで発症された様子です。
上記⑤「消化器炎症タイプ」に該当しますが、治療以降再発がない状態を維持できております。
熱タイプは比較的治りやすいとのことですが、栄養不足タイプは治療に時間がかかるとのこと(『中医症状鑑別診断学』)。
蕁麻疹の治療も当院での治療適応症状です。お悩みの方はご相談ください。
スタッフ 杉本
※新着時期を過ぎると左サイドバー《上記に記載のない症状》に収められています。