〇悪露不絶(おろふぜつ)について
悪露とは出産後子宮内に残存している血液、粘稠質の液体を指す。通常2〜3週間ですべてが排出されるとされているが、産後2〜3週間を過ぎても悪露が残存し、血液・分泌物が点下するものを悪露不絶という。
〇悪露不絶の現代的解釈(子宮復古不全)と治療法
悪露不絶は子宮復古不全に類似している。分娩を終えた子宮はおよそ6週間をかけてもとの大きさに戻っていく。悪露は胎盤・卵巣膜剥離円からの血液や分泌物が主体とされており2週間以上血性の悪露が続く場合には子宮復古不全の可能性が考えられる。子宮復古不全となる原因としては、 ①遺残物などの障害物が子宮の復古を阻害する器質的なもの、②子宮が収縮できない機能的なものが挙げられる。治療法としては子宮内容除去術、子宮収縮促進薬の投与が行われる。
〇東洋医学的解釈と分類
大きく子宮の「収縮力不足①・②」と「熱③」が挙げられる。理由は子宮の活動力低下・冷え・血流停滞などに及ぶ。以下、中医書に記載されている3分類を解説していきたい。
①気虚悪露不絶(ききょおろふぜつ)
子宮の収縮する力の不足が大きな原因となる。力不足は摂血不能にも及び身体各部の症状として出現する(主に気の作用である内臓を一定位置に留めておく作用・血液が子宮から漏れ出ないようにする作用な低下による)。もともと消化器が弱いこと・また出産により過度に体力を消耗したことなどが前述の症状を招く。
(特徴)3週間以上たっても出血が依然としてみられる。量も多い。色は淡い。
(身体症状)顔色は青白く黄色を帯びている・心身疲労・腰が重だるい・下腹部の下垂感など
②血オ悪露不絶(けつおおろふぜつ)
血液停滞に起因する。出産を通じた全身・子宮のエネルギー不足に乗じて、外的環境(冷え)が加わることで血液停滞が生じて子宮の活動力(収縮力)が低下する。
(特徴)出血量は少ないが暗紫色で血塊が混じる・排出もスムーズでなく痛みも伴う
(身体症状)顔色が暗紫色・下腹部の痛みなど
③血熱悪露不絶(けつねつおろふぜつ)
熱による過活動状態が原因となる。熱が生じる原因は出産時の気血不足に加え①もともと陰虚体質ゆえ保湿不足となる熱が生じること・②子宮内に外的環境(熱)が内攻することが挙げられる。その他、辛い物の食べ過ぎ・出産後の情緒不安定さなども原因となる。
(特徴)分泌物は紫赤色かつ粘稠性で異臭を放つ
(身体症状)顔色が赤い(両頬が赤い)・口や舌の乾燥
スタッフ 杉本
◎参考文献
「中医症状鑑別診断学」 人民衛生出版社
「病気がみえる 産科」 メディックメディア
「中医病因病機学」 東洋学術出版社
「中医基本用語辞典」 東洋学術出版社
「漢方用語大辞典」 燎原出版社
「実用中医婦科学」
※新着時期を過ぎると左サイドバー《妊娠中/産後の諸症状》に収められています。