胎水(たいすい)とは、妊娠5〜6カ月以降、腹部のみならず全身の張り・腫れ、胸が張った感じがして苦しいなどの症状を指す。はなはだしい場合には、あえいで横になることが出来ないような症状が出現する。現代医学でいう羊水過多症(妊娠時期を問わず羊水量800mlを超えるもの)に相当し、この症状が確認できた場合には、胎児の発育形成に支障が見られるために、速やかに治療を行っていく必要がある。
●胎水の原因と解説
体内に生じた余剰水分が子宮へ流入・停滞し、子宮内が貯水過剰になることが原因となる(この際腹部の腫れ・張りが生じる)。貯水過剰の後、全身に流入されることで身体の各部分にむくみ症状が確認される。水液は停留して排出されていないことから尿量・排尿回数ともに少ない。水液代謝に関連する五臓六腑の失調によち生じるが多くは脾気虚による運化失調が原因として挙げられている。以下、中医書に記載される胎水が生じる2パターンについて解説していきたい。
①脾虚胎水(ひきょたいすい)
消化器の冷えによる水液物質の消化・吸収能力の低下による。消化器がもともと虚弱な体質であること・飲食の不摂生・冷たいものの過食が冷えの原因となる。消化・吸収能力が低下することで体内に余剰な水分がため込まれ、子宮に注ぎこまれることで胎水となる。
(特徴)妊娠5〜6カ月以降に腹部は急激に大きくなる・手足顔がむくむ・小便の量は少ない・重症の場合は呼吸が苦しく横になることが出来ない
(身体症状)舌の色は淡い・舌上の苔は薄く白い
②脾腎陽虚(ひじんようきょたいすい)
消化器の冷えによる水液物質の消化・吸収能力の低下による。加えて五臓の「腎」の機能低下により生じる。「脾」と「腎」は相互に関与し合っており、「脾」の活動は「腎」に温められることによって正常な消化・吸収活動が行われている。つまり、「腎」が損傷することで、「脾」を温める力が低下してしまい、「脾」の活動(水液の消化・吸収)低下が生じてしまう。生じた余剰水分が子宮に注がれ、胎水となる。
(特徴)妊娠5〜6カ月以降に腹部が異常に大きくなる
(身体症状)動悸・膝腰が重だるい・四肢の冷え・下痢・顔色が暗いなど
スタッフ 杉本
◎参考文献
「中医症状鑑別診断学」 人民衛生出版社
「病気がみえる 産科」 メディックメディア
「中医病因病機学」 東洋学術出版社
「中医基本用語辞典」 東洋学術出版社
「漢方用語大辞典」 燎原出版社
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