2012/6
不妊症の弁証論治で最も多いのは腎精不足から腎虚。そして腎虚から血オという流れであろうか。
血オでは血塊のほか、内膜の硬度、鼠径部の固さ、高温期の低体温、手掌魚際部の色や仙骨部の乾燥などがよく現れる。
もちろん衝・任脈の気血両虚や肝血虚の人も少なくない。
それら諸症状に陰に陽にと影響するのが肝気鬱である。
肝気鬱は専門用語でわかりにくいと思うので、主に精神的ストレスによる過緊張、不安、パニックなどと考えて欲しい。
その精神的ストレスに、さらに理想と現実の乖離が加わると先の肝気鬱をことさら悪化させる。
つまり嫌だという思いがありながら不妊外来に通う。
期待したのに、また授からなかったという思い。
仕事を休みたくないのに休まなければならないとき、何故私だけこんなに苦労するわけという怒り・・・
などで肝気鬱は悪化する。
肝気鬱が不妊症における主体的病理になることは少ないが、影響していないこともまた少ない。
来院する患者さんのほとんどの方が、不妊治療に通う時間の捻出や治療自体の緊張の連続性・・・から相当に肝気鬱を強めている。
肝気鬱はホルモン数値のブレや排卵期及び生理日のブレ、高温期の乱高下で現れやすい。
もうひとつ上手く表現できないが・・肝気鬱状態を際にいくつかのタイミングが合えば、急激なホルモン数値の悪化、さらには月経停止なども引き起こす。
逆に肝気鬱が治まるだけで思わぬほど良い方向に展開することも少なくない。
この間も数回の肝気鬱の治療だけで内膜が9ミリから13ミリ、卵子のグレード4から2まで上昇したケースがあった。
様々な思いを引きずらないことが肝要である。
昨日の私は今日の私と同じではありませんと思い、いかにストレスを抜き、肝気鬱にならないかも重要な視点である。
不妊治療を止めたら妊娠したという事例は枚挙にいとまがないが、このことを指すのだろう。