妊娠症状として、「足のむくみ」が出現する方が多く見受けられる。
今回は「足のむくみ」を東洋医学的に解説をしてきたい。ただ前提の知識としてまずは妊娠中の母親の状態を説明からはじめていきたいと思う。
●妊娠中の母親の身体の状態について
母親の身体は赤ちゃんを育てるために、子宮へ多くのエネルギー・栄養を供給する。そして母親自身も健康でなければならないため、必要とするエネルギーや栄養素は著しい。五臓で考えると「腎」と「脾」と「肝」が胎児へエネルギー・栄養を生成・供給するもととなる。
・「腎」・・・生殖(胎児の成長・発育)に関連する臓腑
・「脾」・・・飲食物を消化・吸収しエネルギー・栄養を生成する臓腑
・「肝」・・・栄養物質を貯蔵している臓腑
またお腹が大きくなってくることによる物理的圧迫・活動量低下・出産へのプレッシャーで「気滞(流れの滞り)」が生じやすい。
●妊娠中のむくみについて
むくみについては主に「水液代謝異常タイプ」・「滞りタイプ」に分類される。
1)水液代謝異常タイプについて
絶え間なくエネルギー・栄養を生成・供給していることより、生成供給する五臓は疲労しやすい。上述した五臓の中では「脾」・「肝」・「腎」が主に該当する。「脾」「腎」はエネルギー・栄養物質の生成・供給を行うほかに、水液代謝にも関与しており虚損することで水液代謝異常が出現する。その一つとして下肢のむくみ症状が出現することがある。「脾」・「腎」どちらが虚損するかによって出現する症状が異なる。
①脾虚タイプのむくみ
消化器の消化・吸収機能が低下した結果、余剰な水分が身体に溜まることで生じる。むくみ方の特徴としては、押すと戻りにくく・皮膚に湿り気があることが挙げられる。食後に眠くなりやすくなったり、水分量の多い便が出るなどの
②腎虚タイプのむくみ
必要な水液を再吸収し不要な水液を尿へ変化させる機能を「腎」は担っている。機能失調により身体に余剰な水液物質が生じる。むくみの特徴としては、下半身(特に足首)からむくむことが多い。また押すともどりにくく・皮膚に湿り気があることが特徴である。小便の回数は多いが量は少ない・下半身の冷えなどの身体症状が出現する。
Ⅱ)滞りタイプについて
お腹が大きくなることによる「物理的圧迫」や「活動量の低下」・出産に対する「プレッシャー」などは身体循環の停滞を出現させる。全体的に脹り症状が出現。むくみ方の特徴としては、パンパンであるために押してもすぐ戻り、足の甲からむくむことが多い。起床時や長時間同一姿勢であるなどで悪化する。その他、胸やお腹の張りが強く見られる。
Ⅰタイプについては身体の水液代謝・循環をよくする治療・Ⅱ)滞りタイプについては身体の巡りをよくする治療を行っています。
お悩みの方は一度ご相談ください。
スタッフ 杉本
◎参考文献
「中医症状鑑別診断学」 人民衛生出版社
「中医病因病機学」 東洋学術出版社
「中医基本用語辞典」 東洋学術出版社
「漢方用語大辞典」 燎原出版社
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