●胃の機能(はたらき)について●
口から摂取した飲食物を「①受け入れ(受納)」・「②消化(腐熟)して」・「③小腸へ輸送する(降濁)」ことが「胃」のはたらきである。この3つの作用がいずれかが低下することで消化器の不調症状として出現する。
●嘔吐の原因について(胃の機能低下)●
消化器の不調として嘔吐は「口から摂取した飲食物を出す」ということが特徴として挙げられる。
上述の通り、「①受納」・「②腐熟」・「③降濁」の3つのはたらきが低下することで生じる。
まずは「①受け入れ(受納)・②消化(腐熟)能力」の低下から考えてみたい。
食べ物を受け入れる容量が少なくなるためにキャパシティーオーバーを起こすことで口から出てしまうことが考えられる。消化能力が低下することは飲食物が未消化の状態で排出することも考えられる。
次に「③降濁」の低下の視点から述べる。
通常飲食物の流れは「口→胃→小腸」という下方向のベクトルが低下して「胃→口」と逆方向のベクトルへ作用することによって生じる。また漢方の熱の炎上性(上に昇る)という特性も逆方向のベクトルを生じさせるものとなる。
これらの内容を踏まえて、「何が原因」で胃の働きが悪くなるのかの解説を行っていきたい。
●「嘔吐」についての東洋医学的6分類
中医書の記載によると「気候の影響を受けたもの」・「食べ過ぎ含む胃の機能が低下したもの」・「ストレス」が大きな分類として挙げられる。
①外邪干胃による嘔吐(気候タイプ)気候が影響するタイプ。口から胃へ高温・湿気・冷えなどの環境が原因で胃のはたらきを低下させることにより生じる。
一例として、浴室など湿気が強い環境で長時間作業していると嘔吐してしまうなどが挙げられる。
何が胃のはたらきを低下させる原因であるかによって、嘔吐の様子や内容物に違いが生じる。
熱によるものは嘔吐の勢いが激し、冷えタイプは未消化物や水様のものを嘔吐する。
全身的にも、熱タイプは発熱症状(発熱・強い頭痛)や冷えタイプは風邪の初期症状(発熱・悪寒・軽度の頭痛)などが出現する。
②傷食による嘔吐(暴飲暴食タイプ)
暴飲暴食や不衛生な飲食物を口にすることにより胃がダメージを受けたことで生じる。
忘年会での食べ過ぎ飲み過ぎで吐いてしまうのがこのタイプに該当する。
嘔吐症状以外に、臭気の強いげっぷが出たり・飲食物を見るのも嫌になることが特徴。
上腹部の張り感が強く・吐くとスッキリするという症状も。
③胃寒による嘔吐(冷えタイプ)
胃の冷えてしまいはたらきが悪くなっていまうことが原因となる。体を冷やすものの(冷たいもの、生もの)の食べ過ぎ・もともとの体質や加齢により体を温める力が弱くなることなどにより生じる。
嘔吐は少量であること・お腹を冷やすと悪化し温めると嘔吐が楽になることがこのタイプの特徴である。冷えのため水っぽい便を排出するといった症状も出現しやすい。
④胃熱による嘔吐(熱タイプ)胃に熱が生じてしまい過活動状態となることが原因。辛い者や味の濃い者の食べ過ぎ、飲酒過多が熱を生じさせる原因となる。熱は上に昇るという特性のもと、胃から口方向へと従来とは逆方向の力がはたらくため嘔吐が生じる。嘔吐の勢いが激しい・口の中が苦いなどの症状を伴う。 ⑤胃陰虚による嘔吐(乾燥・栄養不足タイプ)胃の栄養成分や保湿成分が損傷されることにより生じる。胃の栄養状態の低下・潤い不足は胃の慢性病を患っていることや発熱後などに生じる。繰り返し嘔吐の発作が生じることがこのタイプの特徴。
未消化の固形物が出たのちに液体を嘔吐、さらにひどければ胆汁を嘔吐することもある。潤いが不足しているために、のどの渇きなどの乾燥症状も伴う。
⑥肝胃不和による嘔吐(ストレスタイプ)ストレスや精神抑鬱など気持ちの部分が胃のはたらきを低下させる。緊張しすぎて吐いてしまうイメージ。ストレスの重さによって症状が変化し、軽度のストレスであれば吐き気を催す程度であるが、ピークに達することで嘔吐してしまう。ストレスの原因から解放されると吐き気・嘔吐は収まる。
いかがだったでしょうか?
「嘔吐」一症でもいろいろな種類があることがわかったと思います。
原因を把握することで、どのように養生すればいいのかもヒントを得ることができます。
(例えば「冷え」が原因であれば、冷たい飲み物や体を冷やす食べ物は避ける・あたたかいものを当日は食すなど)
原因がわからない…といった場合はぜひ一度当院にご相談ください。
治療はじめ、あなたの身体にあった養生法をお伝えいたします。
スタッフ 杉本
※新着時期を過ぎると左サイドバー《胃腸の不調》に収められています。